ビリーがキレたわけ
TréVoy KellyによるPixabayからの画像
教室長の井口です。
日本でもようやくアメリカの「Black Lives Matter」の運動が報じられるようになりましたね。もともとこの運動は2013年から始まっており、今渦中にいるアフリカンアメリカンの人々はこの問題と何年も戦い続けてきたのです。「黒人差別への抵抗と戦い」というのは、そもそももっと歴史をさかのぼれば16世紀にヨーロッパ人がインド航路を開拓したところから始まっているとされています。それを考えると、もう何百年もの間、アフリカ系の人々は抑圧と差別を受けてきているということになりますね。
現在に至っては「奴隷ってだめだよね」「差別って悲しいことだよね」という倫理観が世界的にも共有されており、今日の「Black Lives Matter」の運動に対しては、今となってはAppleを始めとした大企業などからも続々と応援の声が上がっている状況です。
そんななかで、世界的人気を誇るビッグアーティスト、ビリー・アイリッシュがInstagramに投稿した文書が話題となりました。Fワードを使い倒した過激な文面の中で彼女が激しく非難していたのが、「#All Lives Matter」というハッシュタグを付けて拡散させている白人層でした。
「白人は、白人であるというだけで特権を持っている。そんな白人がこの『Black Lives Matter』の運動に対して『All Lives Matter』とか言っているが、本当にどういうつもりなのか。本当に黙って欲しい。あなたたちの命が大事じゃない、だなんて誰も言ってない。ただ今!この瞬間は!黒人の人々がこれまで何百年と踏みにじられてきたという事実についてみんなでちゃんと考えようって、ただそう言ってるんだよ!」というような内容でした。
誰かが「痛い!苦しい!嫌だ!困った!」と声をあげたときに、それを別の問題にすりかえたり、主語を大きくして問題をぼやかしたりすることに対して、毅然と抵抗を示すこと。これはとても大事なことだと、ビリーの主張を読んで私は改めて思いました。こういうことって、小さいレベルでもよくあることだと思うんですよね。
例えば、これは差別とは違いますが、「勉強がツライんだよね…」とお子さんが声をもらしたときに、「そんなの他の子もツライんだから!我慢しなさい!」と言って、それ以上の弱音を封じ込めてしまうこととよく似ています。そんなときは、「どんなことがツライの?」と、耳を傾けて聞いてあげることから、互いを理解し尊重しあえる関係というのは生まれてくると私は思っています。
もちろん、全ての命には尊厳があり、大切にされるべきだと私も思っています。ただ、今傷つき、涙を流し、どうか私たちを尊重して欲しいと両手を挙げて懇願している彼らのことは、全人類が刮目し、考えるべきことだと思います。