まだまだ私たちには「人間」が必要だということ
Yerson RetamalによるPixabayからの画像
教室長の井口です。
私がよく読んでいるサイトの1つに「チャリツモ」というものがあります。社会問題を扱った記事を多数載せているサイトですが、比較的易しめの文体と可愛らしいイラストによってとても読みやすく設計されており、中学生や高校生の生徒さんにもよくオススメしているサイトです。
そこで最近アップされた記事の中に、日本の水道にまつわる現状と課題についての記事がありましたが、読んでみて衝撃を受けました。恥ずかしながら、日本の水道と下水道が極めて危機的な状況にあるということを、この記事を読むまで私は知りませんでした。この記事によると、日本の水道が抱えている問題は「収入の減少・水道管の老朽化・人材不足」の3つだそうです。詳しく知りたい方は、チャリツモのサイトを検索し、記事を読んでみてください。
私が特に気になったのは、人材不足の問題です。以前のコラムにも、化石燃料を運ぶ船隻の船長や水先人の後継者問題を取り上げましたが、水道においても、特に地方で人材が不足しており、自治体によってはワンオペ状態となっているそうです。水は私たちの生活において必要不可欠であるにも関わらず、今にも爆発しそうな時限爆弾のような状態なのだと分かり、「あれ?日本って先進国じゃなかった…?」と呆然となります。
ロボットやAIが、人間たちの生活の裏側でスマートにインフラを整えてくれているなどという未来は、少なくとも日本ではまだまだずっと先の話です。しかもインフラというのは既に出来上がっているものであり、それを管理したり、補修したり、取り替えたりなどといった作業は、人間が持つ「手足(技術)」と「現場脳(知識×経験)」に依存しています。
今の日本の教育の動向を見ていると、どうもこうした人材のプレゼンスを軽視しているように感じるときがあります。「大学受験」というものがこれほど重要視されていることがその証拠でもあります。現場で手足を汚し、ときには汗まみれになり、都度変化する状況に敏感に対応しつつ、知識と経験に基づいた分析や長年の経験による直感を用いて臨機応変に動いていく人材は、机上の学びだけで養成できるものではありません。
こうした人材のなり手をどのようにして集め、どのように養成するのかといった課題は、日本のインフラの現状を考えると、かなり切迫したもののように思えます。新しい価値の発見や創造には教養人と知識人が必要ではありますが、人々の生活を直接支えているインフラ人材もそれと同等かそれ以上に必要な存在です。この課題とどう向き合うのか、私も自分ごととして、もっと考えていかなくてはいけないなと思いました。